カレル・フサがイサカ音楽大学の委嘱により1968年に作曲した吹奏楽界屈指の超名作の解説をします。
まずは、その歴史の背景を知る必要があります。パッと聞いたら現代的な手法も多く、難解な音楽のように感じる「プラハのための音楽1968」ですが、実はものすごく描写的な音楽とも言えます。
まずは、その歴史の背景を知る必要があります。
曲の背景
1968年4月、社会主義であるチェコスロヴァキアでは、市民に言論や集会の自由などの一定の自由を認める「プラハの春」と呼ばれる政策を打ち出します。
しかし、それは周辺の社会主義国家からの批判を集めることになります。
そしてついに8月20日、ソビエト連邦率いるワルシャワ条約機構軍が20万人以上を動員して国境を突破・侵攻し、チェコスロヴァキア全土を占領下に置いてしまします。
抵抗する市民の中には射殺された者もおり、また軍事介入に抗議する学生2名が焼身自殺を遂げるなどの悲劇を生みました。
改革派幹部はモスクワに連行され、チェコにおける改革の中止を求める書類に署名を強制されます。
こうして「プラハの春」は終焉を迎え、真の自由化は、後の1989年のベルリンの壁の崩壊(冷戦の終結)まで待つことになります。
「プラハのための音楽1968」は、プラハで生まれたチェコ人である作曲者カレル・フサがこの一連の事件を知った直後に、激しい怒りと深い悲しみ、そして抗議の意を込めて作曲されました。
ざっくりとした背景はこんな感じですが、とにかくものすごい「怒り」のエネルギーに満ちた作品ってことですね。
曲中の描写
わかりやすい描写としては、
冒頭からティンパニの弱奏で奏でられる「フス信奉者の抵抗の歌」
ピッコロによる自由を象徴する鳥の声
トランペットが軍隊の制圧をあらわす「蹂躙のファンファーレ」
これらのフレーズが時には断片的に、時には激しく、形を変え何度も登場していますよね。
曲最後は、ティンパニに導かれ「フス信奉者の抵抗の歌」が厳かに歌わます。
しかしサウンドクラスターが表す混乱の中から近づいてくる無表情な兵士の足音に、一度は打ち消されてしまいます。
しかし市民の屈しないという強い意志により、最後まで歌い切り曲は終わります。
まぁ、自由を象徴する鳥の声を表わすピッコロ、どんだけ陰湿なんだよ、ってツッコミは置いといて。
このような背景を知ると、トーンクラスターの「意味」に深いものを感じずにはいられません。
てゆーか4楽章の頭とかもうマシンガンの乱射にしか聞こえない・・
オススメ音源
イーストマンの素晴らしい演奏です。
おまけ
「プラハの春」について非常に面白い物語発見しました。
僕の好きな「やる夫」シリーズですw
でも小説が元なので、よく出来てるしわかりやすい。
そこまで長くないので、時間ある方は是非読んでみてください!
※PCでしか見にくいと思います。
「プラハの春 ~やる夫たちはささやかな自由を求めて戦うようです~」こんなにシリアスなやる夫、見たことがないっ!
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